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OKUの細道

私の周りの様々な人々や日々の出来事を少しひねって紹介

Dog Tag   第3話

夕方、ハイドパーク内のサーペンタイン湖を横手に見ながら歩いている。もうちょっと行けば目的地に着く・・・
ピカデリーに近いHotel Ritzの前で大きく深呼吸した僕は、約束を果たしに行く為フロントに向かった。




ミャオが作ってくれた凄く美味い朝食の粥を食べてる時、

「ねぇ、何か貴方が身に着けてる物と私の物と交換しない?」
「どうして?」
「うーん、多分近い内にYouichiにもう一度会う予感がするの。それまでの人質」
「じゃあ次会うときは感動の再会じゃなくて人質交換なんだ?」
「そう!辛い時に私の励みにする!忘れたくないし・・・ね」
「わかった。じゃあネックレスを交換しようか?」
「うん、人質は大事に扱うわ」

僕は、そう言って笑うミャオをもう一度だけ強く抱きしめて耳元で「きっとな」と日本語で囁いた。

Dog Tag(軍認識票)を模ったネックレスとミャオの水晶のネックレスを交換し、再会を誓って部屋を出た。
リフトに乗って1階に降りた僕はふと気になって再度4階のボタンを押しリフトを動かす。
んッ?まともに動くな・・・・再度1階に・・・んー、ちゃんと1階に・・・・・やられた。


苦笑しながら歩くロンドンの朝空は珍しく青く、そして眩しかった。



白髪の品の良いフロントマンに名前を告げ、予約担当のミャオに面会を申し込むと、アポはあるのかと聞かれる。
「5年前にアポは取ってある」
「5年前?」
「YES!」

フロントマンは苦笑しながらも内線電話で誰かを呼び出してくれている。
まずい、緊張してきた・・・

一人のアジア系のスタッフが寄ってきた・・ミャオ! と言いかけて止まる。別人?
「スタッフの森と申します。」
「あっ、日本の方?すいません。ミャオさんの友人なんですが、彼女は?」

「申し訳ありません。彼女は1年前に退職致しました」
「退職?じゃあ今どこに?」
「さあ・・存じておりません」
「何故辞めたのですか?ヘッドハントで他のホテルにでも・・・?」
「申し訳ございません。存じておりません」


僕は礼を言ってホテルを出た。そうだよな・・映画じゃあるまいし。都合よく行くわけ無いもんな・・
そう思いながらも足はミャオのアパートに向いていた。
うろ覚えながらも何とかたどり着いた僕はロビーの表札に指を這わす。
「無い・・・居ない」


そこからどう歩いたか覚えて無い。とにかく歩いた。ミャオと出合った2日間だけを想いながら。
もしかしたら会えないとは思っていたけど・・・思い出だけにしとけばいいって事だよな。


あっ!この店・・・あのパブ。偶然見つけた店にドキドキする。一杯だけ飲もう。もしかしたら・・・


しかし当然ながら店内にミャオは居るわけも無く、バーマンや他の客にも見覚えは無い。
ビールと軽いつまみをオーダーしてカウンターで一人飲む。アイリッシュ系のパブと違い此方から話かかけなければバーマンは客に話しかけてこない。
ちょうどいいや、静かに飲みたい気分だし・・・

突然、肩をたたかれる。 誰?と振り向くと見覚えの無いイギリス人男性。
凄い早口で話掛けられるがまだ耳が慣れてないので部分的にしか理解できない。
えっ、写真がどうしたって?

唖然としてる僕に業を煮やしたのか、こっちに来いと壁際のボードの所まで連れて行かれた時、
あっ思い出した!この人あの時のバーマンだ!

そしてピンで写真がたくさん貼られてあるボードを見るとその中にミャオと一緒に写ってる写真が・・

あぁ、そうだよ、これは僕だよ。ちゃんと覚えてるって!えっ、何?もっとゆっくり話せって!
ミャオだろ?なあ?彼女はまだロンドンに居るの?
えっ、病気?もともと身体が弱かったんだ・・・そっか。で台湾に戻ったんだ・・・

その写真持っていけよ、とバーマンはボードから写真を外す。
礼を言って受け取り店を出ようとすると、待て待てとバーマンがカウンターに戻り何かを持ってきた。

これを交換するよう頼まれてる。
と差し出されたのは僕のネックレス・・・・

「これって・・・」
「彼女は必ずお前が来るからって」
「ミャオがそう言ってたの?」
「ああ、ミャオも必ずまたロンドンに戻るからってな」

ミャオのネックレスをバーマンに預け、彼女が来たら必ず又ロンドンに来ると伝えてとバーマンに伝言を頼み店を出た。

5年ぶりに着けるDog Tag・・・
次はいつかな、ミャオ・・・又5年後?それとも10年後か?

明日は朝早い。ホテルに戻らなきゃ。




遠くで猫の鳴き声がする。



分かってるって、ミャオ・・・・・もう遅いし裏通りは歩かないよ。


                                   


長かった・・・

ひねり所は内緒。

また通常ブログに戻らなきゃ ^^;






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<Synchronicity> 意味ある偶然   第2話

沈まない太陽を追い続けるようにフライトする飛行機は、まるで時間を遡る様に僕の想い出をより鮮明に甦らせてくれているようだった。

LAND ROVER.Trekレースで日本チャンピオンになった僕は再度イギリス~フランスに向かう事になった。ミャオの言った通りになったな・・必ずまた会う予感がするって何度も言ってたっけ。
日程ではロンドンで二日間は時間が取れるはず・・きっと会えるよな。

BA-006便の機内は大きな揺れも無く、静かに時間が流れている。聞こえるのはチームメイトの寝息だけ・・・CAに熱いコーヒーを頼んでから窓のサンブラインドを開ける。
まるで額縁にはめ込んである風景画のようなシベリア湿地帯が眼下に広がっている。あと数時間でヒースローに。 僕は5年前のあの約束を何度も繰り返し思い出していた・・・・・



約束の20分前。ピカデリーに着いた僕は彼女が現れるのを想像する。
どんな服を着てくるかな、笑顔か、それともすまし顔でやってくるか・・・・
僕はこうやって早めに来て、待ち人の事を想像する事が大好きだった。

暫くして190cmはあるイギリス人の背後から、隠れて見えなかったミャオが突然手を振りながら現われて僕を驚かせる。 「や、やあ・・」 動揺して顔が赤らむ。夜でよかった・・・・

「早いわね、いつもそうなの?」
白いコットンシャツにジーンズとラフなスタイルのミャオが笑顔で問いかけてくる。
「お腹減ってる?行きたい所でもあるかしら?」
「いや、特に・・出来れば普通の人が行く店がいいな」
「また変なこと言って・・OK!じゃ行きつけのパブでいいわね?」
「いいけど、ねえ、パブって11:00pm過ぎたら閉まっちゃうんじゃ?」

*注* (この当時は原則11:00pmで閉店って法令かなんかで・・・・今は週末ぐらいは営業時間が延びてるはず・・多分。)

「今行くパブはいいの。レギュラーだし、少しだけなら大目に見てくれるわ」

そう言うとまたもや束ねた長い髪を揺らしながら先にすたすた歩き出す。付いて行きながら、いつもこんな感じかなとくすくす笑ってると、通じたのか、北京語でぶつぶつ文句らしき事を(万国共通・不思議にわかるんだよね)言ってくる。そんな言葉の通じないやりとりが凄く楽しい。言葉って通じ無くても困んない事があるんだ・・・相手によるけどね。

店はまだ少しだけ明かりが灯っているけど・・(ダイジョウブ?)しかし週末でもあって閉店時間なのに4~5人の客が残っている。ミャオはバーマンに何やら話かけている。と、彼は急に満面の笑顔で僕にカウンターに来いと手招きして、他の客にも僕の事を紹介してる。(多分、早口すぎて分かんなかった)

「彼になんて言ったの?」
「イギリスが誇るジャギュアー(英国ではジャガーって発音しない)とローバーの日本代理店の人って、英国自動車産業に貢献してるって・・」 (大袈裟な・・)

そういうことね・・・・

ビールやエールは詳しくないのでラガー系のメジャーの物をとオーダーしただけなのに、店や常連客から小エビのフライやクリプスなど大量の差し入れ。

その後、バーマンや他のレギュラー(常連)と暫し談笑して楽しい時間を過ごしたが時間も遅くなり、一人、また一人と帰って行く。照明を一部だけ残した暗い店内、ラストオーダーのビールを頼む。
ほんのり赤みの差した顔でミャオが話を続ける・・・

「ホントはこの国が大嫌い。台湾が嫌で、自分にも自信が無くて、国を飛び出してみれば何かが変わると思ったけど、現実は甘くないわね・・・」

暗い店内だったけど、ミャオの顔が泣きそうになったのが分かった。

「昨日は仕事でも色々あって、もう限界って友達に愚痴ろう思ってたとこで貴方に会ったの。幸せそうに地面に寝転んで・・・頭がおかしい人かと思ったけど、話を聞くと、あぁ 私もこの人と同じだった。初めてロンドンの町を一人で歩いた時、誰彼問わずに抱きついて、そして叫びたかった。私は今日から生まれ変わるの!ってね。思い出したのよ・・・」

「そうか・・・何となく分かる気がするよ。でもロバが旅に出ても馬になって帰って来ない。ロバはロバでいいんじゃないかな・・強いロバになって帰ってくればね。」
「そうね・・・もっと強くなりたいわ」

そう言うとお互いに残ってたビールを一気に飲み干した。

バーマンに礼を言って店を出るとミャオが聞く。
「もうホテルに戻る?」
「そうだね、明日も早いし・・・名残り惜しいけど」

「ねえ!ロシアンルーレットしない?」
「・・・・・・?」

「あたしのアパートって8階建てなんだけど凄く古いの。でね、リフト(米国や日本ではエレベーター)がいつも調子悪くてボタンを押した階になかなか止まらないのよ。4Fを押しても6Fまで行ったり、2Fで止まったり・・・まともに行くのは3回に1回位なの。」

「意味分かんない。どーいうこと?」

「鈍いわね!私の階は4Fだから先に階段で上がってリフトの前で待ってる。貴方は一人で乗って4Fのボタンを押す。違う階に行くのを確認したら、私はすぐ部屋に帰って貴方とはもう会わない。さよならって事。でもちゃんと4Fに止まったら・・・・」

「止まったら・・・・」 僕は意味が分かって心臓が破裂しそうになる。

OTIS製のリフトは蒸気で動いてるのでは・・と疑いたくなるほどに年代物。これは違う意味でも緊張する。約束の3分が経ったのを確認して一人リフトに乗る。

真鍮のプレートに埋め込まれた�のボタンを押すと、意外にも静かに、そして象の歩みの様にゆっくり動きだす。


どこに向かうのか・・・もう一度会えるのか・・・僕は目を閉じて扉が開くのを待った。




ゴゴンッという音とともにリフトが止まり、そして静かに扉が開く。





そして僕は目を開ける。





束ねた髪をほどいたミャオが立っている。





僕が聞く 「Is This Synchronicity?」





ミャオは静かに微笑んだ。






久々の更新。この話はもう止めとこと思ってたけど、リクエストが意外と多かったんで・・・

次回で最終。しかし思い出すと大したことないのに文章にすると長いね~










ピカデリーの猫   第1話(全3話)

今日は掃除の日。私の掃除は時間がかかるのが難点。別に動作が鈍いのではなく、懐かしい品物が出てきて感慨に耽ってしまったり、探してた文庫本なんか見つけてしまったらそこで作業STOP!ちょっとだけね、と読み始めたら最後。気が付けば夕方・・・今日はどれだけ進むかな・・・
もういらないVHSテープの分別も終わり、次は戸棚の整理とアルバムを引っ張り出した時、その封筒は落ちてきた。ん?なんだったっけ・・開けると中には写真が一枚。ロンドンのとあるパブで撮ったもの。数人のイギリス人と真ん中に二人の東洋人。そう、私とミャオだ。

もう10年以上経つか・・・ソファーに腰を下ろしてしばらく写真をながめた。コーヒーでも淹れるか。どうせ暫く掃除の再開は見込めないのだから。

*かなり前の話なので、自分=僕で表現してあります。(若かったなぁ)
*基本的に二人の会話は英語です。頭の中で英文になんとなく翻訳して読んでください。

初めてロンドンに訪れた時、夜のOFF TIMEに一人で町の中心に向かった。かねてからやってみたい馬鹿げた事があったからだ。

「Are You OK?」
ミャオが最初に僕にかけた言葉。そりゃそーだろ。僕は夜の11:00にピカデリーサーカスのエロス像の真下の石段に、両手を広げてうつ伏せに寝ころんでいたのだから・・・
僕は首だけ彼女にむけて、
「問題ないよ、そのーちょっと・・」
「日本人?ホントに大丈夫?何してるの?」
「んーと・・ロンドンを抱きしめてみたかっただけ。COOLだろ?」
「なにそれ?」
そこで彼女は周りの人が全員振り返る勢いで大笑いした。僕もつられてニガ笑い。

「いつもそんな馬鹿げた事してるの?」
「そーかも・・・昔読んだ小説に似たシーンがあったんで真似したくて・・」
「仕事で日本人の同僚もいるけど・・貴方はかなり変わってるみたいね」
「知ってるよ、僕の友人も同じ事を言うからね」
「ねえ、満月の夜に裸で外に飛び出して吠えたりもする?」
「いいねそれ。今度君の家の庭で試すよ」

また彼女は大笑いして僕の横に腰かてきたのでようやく身を起して彼女に聞いた。
「日本人では無いよね?中国人?」
「No!台湾よ。祖先からずっと台湾人。祖父は日本人として徴兵されて太平洋戦争に行ったわ」

彼女はそこから2~3分中国と台湾の歴史をしゃべってたけどほとんど分からなかった。

「ところで君の英語はきれいだね。イギリスには長く居るの?」
「まだ一年よ。貴方の英語もデタラメでキュートよ」
「それは褒めてくれてるんだよね?」
「No!」
「No?」と聞き直すと、彼女はクスッと笑って立ち上がり、
「I Mean Yes!」と言ってウインクした。
「ねえ、時間ある?お腹減ってない?私、友人にすっぽかされたの」
「いいけど・・・13ポンド位しか持ってないよ」
「貴方、やっぱり日本人ね。三ツ星レストランにでも行くつもり?マクドナルドに行くのよ」

白人から見たら日本人も台湾人も変わんないよ・・・とつぶやくと
「何言ったの?日本語が分からないと思って私の悪口?」
いやっ、えーと・・・単語を頭の中で必至で探してると、先に歩き始めた彼女が
「×××× ××× ××××× ××!」と口早に北京語で手招きした。

自分だって母国語しゃべってんじゃん・・・・

「ねえ!なんで俺を誘ったの?」と僕も負けずに日本語で叫んだ。
London010[1]


ピカデリーから300mほどリージェントストリートを進んだ所にあるマクドナルドの小さなテーブルで、日本の物より1.5倍はデカイBig.Macとチーズバーガー、薬臭いCokeとしなびたポテトを挟んで彼女と向かい合った途端、僕は凄く舞い上がってしまった。
何故って、明るい場所で正面から見た彼女がとっても美人だったから・・・
少し釣った大きな瞳がくりくり賢そうに動き、僕はその薄く形のいい唇に眼が釘付けになってしまった。
「仕事で来たの?観光?仕事は何?何歳?」と矢継ぎ早の質問に、僕は確かめる様にゆっくり答えていった。そうしないと鼓動の早さを彼女に悟られる気がして・・・・

日本でJaguarとLand Roverのセールスパーソンである事、今回は工場視察と新型車のテストラン、販売会議で来た事など答えていくと、彼女は質問に飽きたのか、聞いてもいないのに自分の事を話始めた。

今はHOTEL リッツで予約担当として働いてるわ。知ってる?リッツよ!でね、東京のWESTIN-HOTELにも二週間ほど研修で行った事あるの!えびすって町の。
えっ?知ってる日本語?んーと・・・「あい~ん!」

それって志村けん? 今度は僕が店中に響きわたる位の大笑い・・・
そのあと僕たちは、気付けば1時間近くも話に夢中になっていた。最近見た映画、好きな音楽、お互いの国自慢。多分僕の語学レベルでは半分も伝わったか怪しかったけど、その時の二人には大した問題ではなかったと思う。

彼女が初恋の話(この話はよく解らなかったなぁ)を夢中で話してるのを、解ったふりで適当に合い鎚を打ちながら僕は違う事を考えていた。
彼女の髪に触ってみたい・・・
何故か無性にそのみどりがかった様に見える長い髪に触りたいと思った。

そうする事がそうしない事より自然に思い、手が伸びて僕の手櫛が彼女の髪を梳いた。

何度も、何度も・・・

彼女は話を止め、それが普通であるかの様に眼を閉じて僕を受け入れた。

何もかも自然だった。

春に若芽が止まる事なく伸びる様に。

日の光陰が時間とともに移り変わる様に。

僕の指先が彼女の頬に触れた時、不意に彼女が眼を開けて僕を見つめる。

我に返った僕は慌てて髪から手を離して自分のした事の大胆さに赤面してしまった。

僕とは反対に何事も無かった様に彼女は「しばらくロンドンにいるのよね?明日は仕事?」

僕は動揺を隠す様に視線を隣のテーブルの老夫婦に移し
「えーと、Solihullに行くよ。Birminghamの隣町。日帰りだけど・・」
「じゃ明日も逢わない?同じ時間に、同じ場所で」
「え~また寝ながら君を待たなきゃいけないの?」
「馬鹿ね。立って待てていいわよ。それとね、普通こんな美人に誘われたら真っ先に名前ぐらい聞くものよ!」
あっ、そーだ。あまりにも展開がはやくて・・・・

「貴方、名前は?」
「ヨウイチ。きみは?」
「ミャオ」
「えっ、ミャオ? 猫みたいだね。日本では猫の鳴きまねを みゃお・みゃおって発音するから・・・」
笑って僕が言うと

「よかった!牛じゃなくて。もう行かなきゃ!ねえ、明日、きっとだからね!」




遅いから裏通りは歩いちゃ駄目よと瞳をクリクリさせながら自慢らしく言った彼女

振り返りもせず、僕を置いて先に店から出て行った彼女

リージェントストリートの人混みの中をすり抜けるように消えていった彼女

取り残された僕は昔飼ってたシャム猫を、ミャオに重ねて思い出していた・・・


想い出長っ!

疲れた・・・げっ すげー時間たってる!

次回に続く・・・・・・・                     かな・・・・?  

                                            

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Author:real stage
REAL・STAGEの落武者です。いつか御家の復興を企んでいます。